代々木RIOT

5 月 22nd, 2009 § 0

今年に入ってから、おとぎ話は代々木のスタジオを利用している。街の喧騒を避け裏路地に入り、合気道場を過ぎると、ここにスタジオが?と、つい目を伺ってしまう程の、三階建ておんぼろコンクリートビルが佇んでいる。雰囲気たっぷりの地下に降りて行き、屈まなければ入れない程のオレンジ色の扉を開けると、受付に辿り着く。合気道場の前を通る時は、外まで響いて来る師範の厳しい声に背筋をピンと正すのだが、天井の低い入り口の前までくると、やはりまたいつものように猫背に戻っている。

先日、スタジオの店長である小林さんと、その弟分谷山の弾き語りライブを観に高円寺に行った。待ち合わせ場所には、いささか興奮気味の風間が一足早く到着していた。無理もない。この日はおとぎ話全員スケジュールを空けて心待ちにしていたのだから。僕たちは顔を合わすなり、当たり前のように、ガード下の焼き鳥屋に向かって歩き出した。リズム隊が為せる世界クラスのアイコンタクトである。その内に有馬と牛尾も合流し、ほろ酔い気分でライブハウスに向かった。

経験値たっぷり、こんがり小麦色の肌をして、マッチョなボディーにピチピチのTシャツを上手に着こなしている小林さんと、最近、コンビニで売っているブリーチにより金髪に変身を遂げた熊本出身の純情ボーイ谷山が、一体どんなライブをするのか非常に楽しみで、想像しただけでも口元が緩んでくる。

会場は弾き語りライブらしく椅子とテーブルが用意されており、ドリンク券を生ビールに交換し席に着くとまもなく、谷山の演奏が始まった。聞こえてくるのは、ろくに家に帰らず、アコースティックギターを抱えスタジオに寝泊まりしている、二十歳そこそこの男の詩であった。行き場のない怒りや不安がそこにあった。若い頃の自分を投影していたら、たちまち酔いが回ってきたので、参ったなあと思い、会場を見渡すと、一番真剣な顔で谷山の事を観ていたのは、他の誰でもなく風間だった。ライブが終わった後、風間に感想を尋ねると、「最後2曲のコード進行が同じだったね。」などととぼけた事を言っていたが。心打たれた事違いない。

そしていよいよ真打ち小林さんの登場だ。七年ぶりのライブとあって黄色の勝負Tシャツにクールなグラサンで登場、いつにも増してピチピチである。本人曰くだいぶ緊張していたらしいが、そんな事は微塵も感じさせない堂々たるステージングだった。曲が終わる毎に乾杯の音頭をとり、「もどかしくて」に代表されるオリジナル曲の他、皆が一緒に歌えるカヴァー曲も披露するなどして、ファンサービスに徹底していた。中でも弟分の谷山に向けて歌ったビートルズのヘルプ日本語バージョンは忘れられないものになった。あれからというもの、スタジオの道すがら気付くと鼻歌を歌っている。「泣きたくなる事もあるだろう、どんなに強がっていても」と。

ちょうど昨日、おとぎ話「青春GARAXY  EP」がリリースされた。大ヒット間違いなしのこのシングルが生まれたのも、愉快なスタッフが働く、居心地が良いスタジオでのんびりやらせてもらっているおかげである。

住めば都と云うけれど

4 月 23rd, 2009 § 0

人生の諸先輩方の話を聞くに、自分の住んでいるマンションは身分不相応なのではないか?このまま住んでいても、どうせ七月の頭には部屋の更新料が別にかかるので、いっその事引っ越してしまおうと思い立ち、幾つかの間取り図と睨めっこをしている。

今の所に引っ越してくる決め手となり、ずっとお気に入りだった天井の高いロフトも、今ではほとんど使っていない。昔燃やしたギターが飾ってあるだけだ。必要ない。今より築年数も多少あっていいではないか。その方がカリモクのソファーもしっくり来るはずだろう。

僕は不動産屋を訪れた。ここは二年前、今のマンションに越して来た際に、いろいろとお世話になったこともあり、馴染みがある。白髪混じりの髭を蓄えたオヤジに相談すると、二件の物件を紹介された。近くにあるというので、早速見に行くことに。歩いている内に、髭のオヤジは僕の事を思い出したらしく、急にご機嫌になった。髭のスペクタクルなトークに翻弄されつつ、最初の物件に。ところが部屋に上がるなり、肝心の髭が浮かない顔をしている。

「ここはうなぎの寝床だからな、あんまり薦められんよ」
「うなぎの寝床?」
「奥の間に行くのに部屋を一つまたがないといけないんだよ。圧迫感があって嫌いなんだよね。」
「はあ…」
「うなぎみたいにシュル〜と細長く部屋が続くだろ?だからそう呼ぶんだ。」
「へ〜」

この間取りの方が精力がつき、夜の夫婦生活が円満になるとか、そういう話ではなさそうである。何だか日当りの悪い畳の間を行ったり来たりしてると、髭の顔がうなぎに見えて来たので、部屋を後にした。

二つ目の物件は、二階が居住スペース、一階部分が駐車場という造りになっている。変則ではあるが、一応夢の一軒家である。先程とは打って変わり、髭の顔のツヤもいい。確かに嫌な圧迫感はなく、開放的な造りである。収納も多く、ベランダも広い。髭が持ち前の冗舌ぶりを発揮する。

「ここだといくら騒いでも誰も文句言わないし、ヘッチャラだよ。」
「こういう仕事をしてると、収納を見れば、その家が湿気っぽいかどうかすぐわかる。ここはね、ほらね、からっとしてるでしょ。」
「俺だったらこのベランダに人工芝引いて、コーヒー飲むな。」
「これで、今より家賃が3万円さがるんだぜ。」

成る程、この一連の流れ、髭にうまくやり込められた感じもあるが、ここがすばらしく思えて来た。それに、近頃は防音マットとやらも発達しているであろうから、こないだ購入した自慢のラディックドラムも小手先程度になら叩く事が可能だ。と、なると後は、家にいる大奥を説得できるかどうかである。

ギター

ギター

KAH-HUN

3 月 23rd, 2009 § 0

拝啓、花粉様。

あなたには、物心が着いた頃から、大変お世話になっております。
別れの季節3月になるとやってきては、ちょうど新学期が始まり、新たな友と出会う迄の、一ヶ月と半月程、私の寂しさを紛らわそうと、わざわざ風に乗って、山里離れたこの街まで、会いに来てくれているのですね。本来ならば、面と向かって「ありがとう」と感謝の気持ちを述べたいのですが、ついつい、私の方で感極まってしまい、とてもじゃないけど、涙と鼻水とで、まともな状態でいられなくなってしまうので、こうして、手紙を書く事にしました。

もうじき桜の花が咲きます。世間は花見だ、と盛り上がりますが、私は乗り気にはなれません。どうしても花びらより、あなたの事が気になってしまうのです。あなたの事を思うと、涙が溢れ出し、鼻水がとまらなくなり、酒の注がれたコップ片手にじゃれ合う皆のように、笑顔でいられません。でもそんな顔、とてもじゃないけどあなたに見せられたもんじゃないでしょ。あなたに嫌われたくないからマスクで顔を隠したりもするのですよ。

三月になり、朝のニュースであなたが話題なると、今年もやってくるんだなあとドキドキします。こう見えても、私はあなたのことを毎日テェックしているんですよ。最近、頭がぼーっとして、何をするにも、集中できなくなりました。これが恋煩いというやつでしょうか。今日も医者に行って薬をもらってきました。恋の病に一日一錠、二週間分です。

22時の催眠術

2 月 17th, 2009 § 0

僕はバンドマンのくせに早寝早起きが習慣になっている。情けない話だが夜十時を過ぎた辺りからそわそわしてくる。せっかく家に友人が遊びに来てくれても、やっぱりその時間になれば、なんとか帰ってもらえるよう心の中で念仏を唱え始める。それでも腰の重いお客が居座るならば、テレビのチャンネルをNHKに合わせたり、洗い物を始めたり、あの手この手と策をめぐらすのである。

僕は幼少の頃、毎晩十時近くになると、「早く寝んな、お化けでるぞ」「歯磨くよ、お化けでっろ」と脅かされ、無理矢理寝かせられていた。まあ、いつもの事だったし、父、母に挟まれて寝ていたので、さほど怖くもなかった。

そんなある日、母が町内婦人会の旅行に行ってしまい、父と二人で寝る事に。僕はなぜだか興奮して、なかなか寝つく事が出来ずにいた。もうじき時計の針は十時を回ろうとしている。布団にもぐり、父と一緒にテレビを見ていたが、内心はそろそろ寝なきゃやばいぞ、と思い始めていた。そんな矢先、トイレから戻って来た父が、まじめな顔をしてこんな事を口にした。

「今階段の下から、獅子丸がこっちを覗いとった」

…シシマル?なんじゃそりゃ。神社におるあれか?僕は小便をちびりそうになった。すると、恐怖におびえる様子をおもしろがった父は、さらにこう続けた。

「腹減っとるから、十一時までに寝ないと襲いに来るって」

食われる、確実に。僕は必死に目をつぶった。だが、そんな恐怖の中で寝られるはずもなく、隣から、父の寝息が聞こえ出したと同時に、僕は観念し、泣き出してしまった。そして、笑いながら冗談だと謝る父を、泣きながら責めたのだった。幼い頃の記憶としては、割と鮮明に覚えている。

先日、石川の実家に帰った際、丁度甥っ子が遊びに来ていた。余程楽しかったらしく、夜十時を過ぎても、帰りたくないと駄々をこねていた。
ついに、業を煮やした父が、トイレから帰って来るなり甥っ子を脅かした。
「ほら、早よ帰らな。ナマハゲくるぞ!」これは二十年数前と同じ手口ではないか。確かに、父の頭はかなり薄いので、「ナマのハゲ」に違いないのだが。

丸刈りの甥っ子は泣きじゃくっていたけど、僕は何だか嬉しくなった。父は二十数年前の獅子丸襲来事件を覚えているのだろうか。

リーグ オブ ジェントルマン

リーグ オブ ジェントルマン

TSUMAMI

1 月 27th, 2009 § 0

「お前ら、アンプの一つや二つ持っとらんと話にならんぞ!ホンマに」

九州出身にも関わらず、うさん臭い大阪弁を話す男に催促され、おとぎ話四人で、楽器屋が並ぶお茶の水の街へと足を運んだ。防音ブースでたくさんのアンプを試奏する牛尾の表情は、本当に楽しそうだったのだが、ん?、その中に、世界限定500台のブライアンメイ(クイーンのギタリスト)モデルのアンプが混じっているではないか。先日、ネットでこのアンプを見かけ、牛尾と一緒に吟味した代物だ。

「牛尾これ!クリッククリック!」
「あっ?メイモデルだ。見た目は普通のVOXっすね。」
「これ買えばあの音出るんじゃねーか?」
「ん〜、でもこれつまみがボリュームしかないっすね。使い勝手ないっすよ。」

何て言ってた癖に、ちゃっかり試奏してやがる、全くかわいい後輩だ、なんて思いながら、僕もどんな音が出るのか気になるので、防音ブースの中に入った。成る程、確かにこれは使えない。いくらギター本体のボリューム、トーンを弄ろうがアンプからはあの音しか出てこないのだもの。なんて頑固なアンプだろう。

ところで、来る2月8日、おとぎ話は千葉LOOKでライブをする。
日本が世界に誇るロックバンド、ミッシェルガンエレファントの、全国ツアー初日はいつもその場所だった。多くのバンドマンに馴染みのある、老舗のライブハウスである。

おとぎ話も何度かギグを行った事はあるが、今回は訳が違う。共演者の中にミッシェルのメンバーがいるのである。レディオキャロラインのウエノコウジさんだ。

高校生の頃読んだ雑誌のインタビューで、ベースアンプのセッティングについて質問された彼は、「つまみ?よくわかんねえから、全部フル10だよ」という問題発言をしていた。当時僕と一緒にバンドをやっていた亀田が、それを真に受けて、轟音の中アンプの前に立ち尽くし、全てのつまみを右側に回しながら、首を傾げていたのを覚えている。

果たしてウエノさんのアンプからはどんな音が出るのか。是非今度の機会に確かめてこようと思う。

ぬいぐるみ

ぬいぐるみ

想い出のサンフランシスコ(後編)

1 月 6th, 2009 § 0

「あいつ、このスティックを見たら、きっと度肝抜かすだろうな。」

学年一つ下のドラマー、ヨシノスケの家の車庫が俺たちの練習場所だった。
灯油の匂い漂う納屋にドラムセットが組まれており、其処にフェルナンデスのミニアンプを三台持ち込んで俺たちは演奏していた。演奏というより、ただ田んぼ相手に喚き散らしていた、といったほうが正確かも知れない。言いたいことなんてなかった。
思春期の苛立に理由なんてない。

中学の時剣道部だった、初心者ドラマー、ヨシノスケは竹刀をスティックに握りかえて毎日のように練習、あっという間に上達した。その頑張る姿に心打たれた僕は、このスティックをヨシノスケにあげたのだった。これをお守りにしてドラム頑張れよ、と。だが後日、いつものように練習場所に行くと、ヨシノスケが何やら神妙な面持ちでこちらの方を伺っているではないか。どうしたというのだ。なんと、練習熱心なヨシノスケは自前のスティックを全部折れるほど使い込んだ挙げ句、しまいには新しいスティックを買う金がないからといって、キュウちゃんのスティックで練習してしまったというのだ。ただでさえボロボロだったスティックがどうなったかは言うまでもないだろう。けれども、誰も文句一つ言わなかった。だって奴の手のひらはマメと内出血で腫れ上がっていたんだから。宝物は無くなってしまったけど、俺たちは代わりに、かけがえのないものを手に入れたんだ。
どうだ、最高にHIPな思い出だろ?

俺たちは最高だった。ミッシェルのコピーも少しずつ形になっていき、レパートリーも増えてきた所で、俺たちはミッシェルの「ブギー」と、一分半のオリジナル曲、ハードコア田んぼブルース「闘牛」の二曲を引っさげてアマチュアバンドコンテストに出場。前越(g、vo)西川(g)亀田(b)ヨシノスケ(d)のカルテットだ。僕はスーツ姿のカートコバーン、亀田の胸にはどでかいモッズマークがそれぞれプリントされていた。プリントごっこで印刷した、自作のイモ臭いTシャツである。ギターの西川英ちゃんはミッシェルの曲をやるにも関わらず、なぜか足下で「グランジ」のエフェクターを踏んでいたし、まじめなヨシノスケは緊張から高熱を出していた。勿論全員カールコードだった。こんな無茶苦茶なバンドだったけど、審査員が田んぼのブルース「闘牛」に釘付けになったらしく、審査員特別賞により、なんと金沢で行われる,北信越大会にまで出場するまでに至った。そこでの結果は散々だったけど、とにかく俺たちは最高にHIPだったんだ。

現在英ちゃんは石川県で女房の尻に敷かれながらも、2児のお父さんになっている。亀田は鈴鹿でサーキットの音を聞きながらサラリーマンをやっている。名古屋、大阪でのライブを見に来るが、その時にたまに自分の着なくなった洋服を持ってきて、プレゼントしてくれるのが嬉しい。僕ほどではないが奴はオシャレだ。ここでこうやって言っておけば、これからは毎回の様に洋服を調達してくれるかも知れない。ただ、モッズマークのプリントTシャツだけは勘弁だけどね。ヨシノスケはどうしてるかなあ?僕がドラムやってるって知ったら、きっとあいつの事だから、また目の色変えて練習するんだろうな。

「ずれたままでいった 帰り道知らない」

そしたら僕もギター練習するから、またいつかこの四人で「ブギー」を演奏
出来たらいいな。

「フラフラ咲いて カラカラ鳴いた」

なんか灯油臭いね。

「続いていくんだろう」

ミッシェルガンエレファント、今でも大好きだ。

Dr.マーチン

Dr.マーチン

想い出のサンフランシスコ(前編)

12 月 15th, 2008 § 0

高速道路、流れる景色の中、チキンゾンビーズを聴きながら、「アベさんはバンドやらんのかなあ」って今まで何度呟いただろうか。

おとぎ話のツアー中の車内BGMで、ミッシェルはマストアイテムだ。ミッシェルを聴きながら各々学生時代の悶々とした記憶を辿るのである。現在、チバさん、クハラさんがバースデイ、ウエノさんがレディオキャロラインで活躍しているのは御存知だろう。僕は高校生の頃、同仕様のテレキャスターギターを購入する程アベさんに憧れていたので、そこにアベさんの名前が出てこないのが、残念で何だか寂しいなと思っていた。そんな折、アベさんが、同じ広島出身の吉川晃司兄貴の年末コンサートでサポートギタリストを務めるという噂を耳にした。硬派なミッシェル党の人には賛否両論あると思うが、この話を耳にしたとき、僕は本当に嬉しかった。興奮しすぎて、おとぎ話のライブに支障が出ないか心配である。これをきっかけにまたあの豪快な、拳の固まりのようなカッティングを聴けるかと思うと、さっきから胃の奥が方が熱くなってきている。

高校一年の冬、丁度10年前、僕は金沢AZホールにミッシェルのライブを見に行った。「ハイチャイナ」から始まった2時間のライブ中、息をのんだまま一度も呼吸できなかったんじゃなかろうか?それくらい衝撃的だった。アンコールの「シスコ」が終わった瞬間、キュウちゃんがスティックを客席に投げた。スティックが空中を舞い、落下地点にたくさんのキッズ達が群がる。花嫁のブーケトスのようだ。まだ放心状態だった僕は、動く気力もなく、その光景をただ眺める事しかできなかった。するとどうだろう、誰もスティックをキャッチする事が出来ず、人の頭の上を伝って、どんどんこちらの方へと近づいて来るではないか。奇跡が起ころうとしている、そう思った時、僕はもう既に、スティックを手の中に握りしめていた。

リムショットでボロボロになったそれを見た時、咄嗟に自分が悪いことをしたような気がして、誰にもバレ無いようにスティックをTシャツの中に隠した。ボロボロのスティックに感動して、僕だけの秘密にしたかったのだ。さらに驚くべきことに、一緒に行った連れが、もう一本のスティックを拾ったといって僕の方に持ってきた。僕はこの時ドラムの神様の洗礼を受けたのかも知れない。とにかく合計二本のお宝をゲットした僕は熱っぽく家路に着いた。

そして後日、僕は当時組んでいたバンド練習に宝物のスティックをしたり顔で持って行った。

革ジャン

革ジャン

食堂

11 月 24th, 2008 § 0

理由なき反抗ツアーで博多に行った際、お昼にしようということで、天神にある「味の正福」という定食屋に入った。老舗の雰囲気が漂う店内はランチタイムのピークも過ぎ一段落付いていたようだ。店の常連であろうおばあちゃんが、僕らの標準語が珍しいのか、頻りにこちらの様子を伺っているのが印象的だった。何を食べようか、僕がいつものように優柔不断っぷりをぷりぷりしていると、横に座っているおとぎ話ご意見番、佐賀県出身の「白髪の九州男児」こと北島が、関鯖にしたらどうかと薦めてくれた。何でも大分県で水揚げされる鯖で、この時期は特別キュッと身がしまっててコリコリしているとのこと。えっ!鯖がキュッとしてコリコリ?その響きが気に入ったので、すかさずキュッとしてコリコリの関鯖を注文するも、本日はもう売り切れたとのこと。おいおい、もしかしたらさっきぷりぷりしていた時に他のお客さんに先を越されたんじゃないか?
今更悔やんでも仕方がない。

「じゃあブリを焼いたのを」

今思えば、この時シュッとしてガリガリの僕が、普段より幾分か低く渋めの声の調子で注文したのは、メンバーに動揺を悟られたく無かったからであろう。

接客を担当しているのは、柴犬のようなつぶらな瞳をした肌つやの良いおやっさんで、定食屋には似つかわしくもない、ブーツと細身のブラックジーンズを上品に穿きこなしている。幾度と無く機嫌を取りにテーブルまできたけど、語尾の切れが心地よく全くうるさくは感じなかった。その内におやっさんが実は幼少期に、横浜の戸塚で暮らしていたという話になった。戸塚といえば有馬の実家のある街だ。僕たちはおやっさんに釘付けになった。そしていろいろ質問攻めすると驚くべき事実が判明した。何とおやっさんは当時、有馬の父さんと同じ小学校に通っており、二学年下の後輩に当たる事が判明したのだ。おやっさんは興奮を抑えきれずに当時住んでいた家から小学校までの通学路、そして近道を説明し始めた。もちろん近所に住んでいる有馬は手に取るように分かるらしく、その坂を下ると云々などと相づちを打っている。つぶらな瞳が一層輝きを増している。無理もない、幼少期の街ほどノスタルジーに浸れるものは無いんだから。あの定食屋で有馬とおやっさんは共に、黄金色の戸塚の街を、通学路を心に描いていたに違いない。

「味の正福」 横浜戸塚から遠く離れた福岡天神で、世代を飛び越え、遠き日の景色が甦ったのである。お腹一杯、胸一杯。ご馳走様でした。そうだ、今度石川に帰省したときは父さんと定食屋に行こう。

赤霧島

赤霧島

出会い系頓知サイトでカモる一休。

11 月 3rd, 2008 § 0

先月、あだち麗三郎君のレコーディングにドラムで参加したのだが、どういう経緯か忘れたけどスタジオに向かう車内が、「一休さん」の話で持ちきりになった。

殿様「やい一休、この屏風に描かれた虎を捕まえてみろ」
縄を片手に一休は考えた。ポクポクポクチーン。
一休「わかりました殿様、私が捕らえますので、まずは殿様、こ
の虎を屏風から出して下さい。」
殿様「こりゃ参った」
  
聞けばこの一休、日々の修行の甲斐があったかどうか知らないが、晩年はプレイボーイになったそうだ。羨ましい限りである。男たるものいくつになっても、いくら修行をしても、煩悩は消えないものですよね、一休さん。

一休「慌てない慌てない、一休み一休み」
出会い系頓知サイトで知り合った女性をラブホテルに連れ込もうとする一休。手にはしっかりと縄が握られている。
一休「君に取り憑いている狐をこの縄で捕まえてやろうか。」
  「ぽくぽくぽくち〜〜〜ん!!」

本当はあだち君とのレコーディングの事を書けば良いのだけど、彼の才能をいちいち文字にするのは失礼なので。

亀様、もう少しだけ

10 月 7th, 2008 § 0

先日、キングブラザーズとの男臭い北国ツアーから東京の自宅へ帰って来た。家の者は仕事に行って居ないはずだが、どうやら奥の部屋の様子がおかしい。何だろうと思い、四畳半の居間を覗くと、出窓のスぺースにあるはずのない水槽が置かれており、その中の敷き詰められた小石の上に緑色の甲羅が並んでいるではないか。何と、カーテンから日が漏れているその先に、二匹の亀が家の留守番をしていたのだ。只でさえ狭い部屋なのに、勝手な事しやがる。

彼らは文字通り首を長くして待っていた。僕が帰ってくると、餌を要求しているのか、水槽をよじ登ろうとガリガリ音をたてた。ツアーの疲れで気が立っていたので、引っ張り出して踏みつぶしてやろうかと思った程だ。見れば手紙が添えてある。「一日三回餌を与えて下さい。」誰がくれてやるもんか、僕は知らぬ振りをして、珈琲を飲み、荷物を片付け、洗濯を終わらせた。洗濯物を干している最中、背後に視線を感じ振り返ると、二匹揃って納得のいかぬ顔をしてこちらを伺っていた。だが僕にその気がないことが分かると、観念したのであろう、各々じゃれあったり、小石を掘るなどして暇を潰し始めた。

三十分くらいテレビを見たまま、うとうとしていたのだが、そういえば水槽の方が先程とはうって変わって、嘘のように静まりかえっているではないか。遊び疲れたのか、それとも僕が餌をあげないせいで元気が無くなってしまったのか。もう夕方になる。朝から何も食べてないのかしら。段々気になってきて、説明文に書いてある通りの用量10粒よりも2、3粒多く手に取り、水槽に落としてやった。すると半分甲羅にうずくまっていたのが頭を出し、ゆっくりと餌に近づいていった。よく食べている。二匹の内の黄緑色をしたほうが食い意地があったのでお叱りの意味で別の容器に移し、もう一匹の緑色の方にゆっくり食事の時間を与えた。また餌とは別に、「甲羅が立派になる亀専用小エビ」なるものがあったので、それも少しずつ与えた。僕は何ともいえない満足感を手にした。本当はもっとたくさん食べさせてあげたいけど、元気になりすぎて、夜な夜な水槽を飛び越え、誰かに踏みつけられやしないか心配なので、我慢した。

仕事から帰ってきた所を問いただすと、どうやら姉が旅行に出ている三日間だけ預かる事になったらしく、明日の昼には、飼い主である姉が引き取りにくるそうだ。
僕は半分布団にうずくまり閉口した。どうも納得がいかない。

亀様

亀様