「風間が腹痛で寝込んでいる」
知らせを受けた我々は、お昼過ぎに彼の住む蒲田へと向かった。風間に電話をすると、「気の利いた物を買って来てくれ」という事なので、コンビニで一番つまらなさそうな、土方歳三の漫画を購入し、彼の家に。
ノックして数十秒、漸く風間が玄関を開けてくれた。地面に這いつくばり、眩しそうに、しかめっつらでこっちを見あげている。「おいおい、俺たちの笑顔がそんなに眩しいのかよ?」などと洒落の利いた言葉など出てこなかった。それは明らかに苦痛に満ちた表情であった。そして彼は振り絞った声で「散らかってるわ、ごめん」とつぶやき、また這いながらベットへと、動物のように戻って行った。
ここまで酷いとは予想だにしておらず、我々にも一気に緊張感がはしった。もう土方なんてどうでも良かった。休日急患を受け付けている、大田区、品川区の総合病院に問い合わせをした。すぐ診察出来る病院が見つかったので、有馬と表通りまで行き、すぐ様タクシーを捕まえた。風間がスタッフ(西田まさる)に抱えられながら、近づいてくる。痛々しくて直視できなかった。運転手が事情を飲み込み、飛ばしてくれたおかげで大森の病院まではスムーズに辿り着く事が出来た。我々が乗ったタクシーは、ハイブリッドエコカーだった。
待合室には風間の他にも急患の方がたくさん居て、具合がわるいのであろう、やはり一様に顔色が悪い。空気の重さに耐えきれず、外の空気を吸おうと、その場を離れ正面玄関のほうに向かうと、ひと際顔色の悪い男が前方からやって来た。牛尾である。先程寝起きで、風間の容体を聞かされ、急いでタクシーで駆けつけたそうだ。皆で固唾をのんで風間が診察室から出てくるのをまつ、その間に今度のライブはスリーピースでやるのか、サポートメンバーを迎えるのか、などと話し合おうとするのだけれど、何せ風間が気になって仕方がない。結局答えが出ないまま、風間が診察室から顔を出した。まだレントゲンをとってはないから確定ではないがのだが、どうやら盲腸らしいという事だった。我々は一先ず胸を撫で下ろした。そして検査待ちの風間に別れを告げ、梅屋敷の商店街を通り、京急線に乗り込んだ。今度のライブの打ち合わせを兼ねて、スタジオに向かったのである。
皆を楽しませるために、あれやこれやと試行錯誤をしている家に、病院に残ってくれていたスタッフ西田から、「風間さんやっぱり盲腸で今から2時間緊急手術です。一週間入院必要みたいですよ。」「それと、手術室に入る直前に行ってきま〜〜っすって余裕こいてました。」と連絡が入る。
風間が水曜のライブ迄に間に合えば…、というかすかな望みがなくなった今、ピンチをチャンスに変えられるバンドおとぎ話の本質が問われるのではないか。また、早稲田大学のライブまでには、奴も復活するであろうからその時はいつにも増して激しいパフォーマンスで奴の傷口を広げ、再び病院送りにしてやろうかと、企んでいる。乞うご期待!