亀様、もう少しだけ

10 月 7th, 2008 § 0

先日、キングブラザーズとの男臭い北国ツアーから東京の自宅へ帰って来た。家の者は仕事に行って居ないはずだが、どうやら奥の部屋の様子がおかしい。何だろうと思い、四畳半の居間を覗くと、出窓のスぺースにあるはずのない水槽が置かれており、その中の敷き詰められた小石の上に緑色の甲羅が並んでいるではないか。何と、カーテンから日が漏れているその先に、二匹の亀が家の留守番をしていたのだ。只でさえ狭い部屋なのに、勝手な事しやがる。

彼らは文字通り首を長くして待っていた。僕が帰ってくると、餌を要求しているのか、水槽をよじ登ろうとガリガリ音をたてた。ツアーの疲れで気が立っていたので、引っ張り出して踏みつぶしてやろうかと思った程だ。見れば手紙が添えてある。「一日三回餌を与えて下さい。」誰がくれてやるもんか、僕は知らぬ振りをして、珈琲を飲み、荷物を片付け、洗濯を終わらせた。洗濯物を干している最中、背後に視線を感じ振り返ると、二匹揃って納得のいかぬ顔をしてこちらを伺っていた。だが僕にその気がないことが分かると、観念したのであろう、各々じゃれあったり、小石を掘るなどして暇を潰し始めた。

三十分くらいテレビを見たまま、うとうとしていたのだが、そういえば水槽の方が先程とはうって変わって、嘘のように静まりかえっているではないか。遊び疲れたのか、それとも僕が餌をあげないせいで元気が無くなってしまったのか。もう夕方になる。朝から何も食べてないのかしら。段々気になってきて、説明文に書いてある通りの用量10粒よりも2、3粒多く手に取り、水槽に落としてやった。すると半分甲羅にうずくまっていたのが頭を出し、ゆっくりと餌に近づいていった。よく食べている。二匹の内の黄緑色をしたほうが食い意地があったのでお叱りの意味で別の容器に移し、もう一匹の緑色の方にゆっくり食事の時間を与えた。また餌とは別に、「甲羅が立派になる亀専用小エビ」なるものがあったので、それも少しずつ与えた。僕は何ともいえない満足感を手にした。本当はもっとたくさん食べさせてあげたいけど、元気になりすぎて、夜な夜な水槽を飛び越え、誰かに踏みつけられやしないか心配なので、我慢した。

仕事から帰ってきた所を問いただすと、どうやら姉が旅行に出ている三日間だけ預かる事になったらしく、明日の昼には、飼い主である姉が引き取りにくるそうだ。
僕は半分布団にうずくまり閉口した。どうも納得がいかない。

亀様

亀様

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