僕は魚の味が大好きだ。
小学生のころ、学期毎に作成されていた学年文集にこう記した。「僕は鰯が大好きです、毎年の誕生日はケーキではなく鰯で祝います、今年ももちろんその予定です。」魚は健康にも良いし、栄養も豊富だということは知っていたので、僕は得意気だった。
ところがいざその文集が形になり保護者に配られると、その日の夕食時(もちろん献立は鰯)、何故か兄姉には笑われ、母親からはお叱りを受けることに。実は今でこそ鰯は高級魚に成り上がったが、当時は雑魚同然だったのである。恥ずかしくて近所に合わせる顔がないというのだ。
当時、前越少年まだ10歳(すねもスベスベ)、僕は毎週水曜日夜八時に、隣の町から講師を招いて行われているストレッチ教室へ母親と二人で通っていた。その日もドラゴンボールを見終えた僕達はバスタオル一枚ずつ持って公民館へ向かった。蒸し暑い夜だった。「鰯好きなんか?良くできた子やねえ。」「啓輔君賢い訳や。」など近所のおばさんのフォローも空を切り、母親の終始苦笑いの表情が印象に残っている。蒸し暑い夜、アイスを食べながらの帰り道。重い足どり、鰯の味。
想い出はつい昨日のようだ。
最近先輩である知人が接骨院に通い始め、(よくテレビで「ボキボキッ!」と大袈裟な音をたてている例のやつね)色々話をしてくれる。足の長さが揃ってないから体の左右のバランスが崩れ、寝ても疲れが取れないとか、幾らマッサージを受けても肩のコリがひかないとか、仕舞いにはそのストレスで頭痛持ちになってしまうのだ〜!と声高らかに、俺の不安を煽るものだから、その場では鼻で笑いながら「んなこたぁないでしょ」適当に返事をしておくのだけれども、毎日寝る前にはストレッチをするようにしている。
このような事もあり接骨院に興味を持ちだしたのだが、如何せん一人で、頭にスカーフを巻いているであろうオヤジに、ボキボキやられるのは流石に腰が引けるので、渋谷のスタジオ練習帰りに、山手線のホームで牛尾を誘ってみた。「牛尾、俺らドラムとかギターとか弾くから尚更やろ、体固まっとるよ。接骨院や!接骨院!」(接骨商法)すると、想いもよらない好反応が返ってきた。「いいっすねえ接骨院」と、自分の肩を揉みながら、微笑むあいつの顔には、完全に接骨症候群特有の表情があらわれていた。
もうじき牛尾もストレッチを始める頃だろう。
そして次は貴方が誘われるかも知れない。
「接骨院いこうよ」と